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2025/12/9
今日のトレンド

Cap'n Webや並列処理の罠

どうも、マイクです。おはようございます。
2025年12月10日、水曜日の朝7時を回りました。
ここからの時間は「zenncast」、きょうもZennのトレンド記事をゆるっと紹介していきます。通勤・通学中のあなたも、おうちで支度中のあなたも、よかったら最後までお付き合いください。

さて今日は、Zennで話題になっている記事を、全部で5本ご紹介していきます。
Webの新しいRPCライブラリから、並列処理の落とし穴、美しいLinuxデスクトップ環境、クラウドのコールドスタート改善、そして日本語音声合成の最前線まで、テック好きにはたまらないラインナップです。

まず1本目。タイトルは「Cap'n Webについて」。
Cap'n Web は、JavaScript ネイティブなRPCを実現する、npmライブラリのお話です。これ面白いのが、サーバーとブラウザの両方で動いて、HTTP、WebSocket、それから postMessage にも対応してるのに、依存なしで大体10kBくらい、めちゃくちゃ軽量なんですね。TypeScript の型サポートもちゃんとしていて、`RpcTarget` を継承したクラスをそのままAPIとして定義すると、クライアントからは普通のメソッド呼び出しのような感覚でRPCができちゃう。
特に記事のなかで「効いてるな」と感じたのが、HTTPバッチの話。複数の呼び出しや、Promise ベースのパイプライン処理、配列の `map()` なんかを、1回の HTTP リクエストにまとめられるんです。RESTやGraphQLで、リスト処理やネストした取得がつらくなってきたときに、「これで良くない?」って思えるような設計。さらに、WebSocketだとコネクション貼りっぱなしでリアルタイム用途にも使えるし、Cloudflare Workers の Durable Objects や JSPRC と組み合わせると、ステートフルなRPCも扱える。
tRPC や Hono RPC との比較もされていて、「型安全なRPCやりたいけど、もうちょっとスッキリ書きたいな」という人にはかなり刺さりそうです。Hono 向けアダプタのおかげで、Cloudflare Workers、Node.js、Deno、Bun で同じように扱える、というのも現場的にはかなりありがたいポイントですね。RPCまわりをもう一度整理したい人、要チェックです。....

続いて2本目。タイトルは「『その処理、本当に並列ですか?』Node.js, Python, Ruby, Goで踏み抜くCPUバウンドの罠」。
名前からして身に覚えがある人、多いんじゃないでしょうか。この記事は、4つの言語で、I/OバウンドとCPUバウンドの処理がどう振る舞うかを、ちゃんと実験して整理してくれています。
Node.js はシングルスレッド+ノンブロッキングI/Oの世界なので、Promise や async/await でI/Oはいい感じに並行化できるんですけど、重い計算を載せるとメインスレッドを占有して、実質逐次実行になってしまう。CPUバウンドをちゃんと並列化するには Worker Threads が必要だよ、という話。
PythonとRubyは一見マルチスレッド対応なんですが、PythonのGIL、RubyのGVLのおかげで、同時に動けるのは結局1スレッド。I/Oには効くけど、CPUバウンドは速くならない。ここを回避するには、Pythonはmultiprocessing、RubyならRactorを使う必要があると。
一方で Go は、Goroutine を複数のOSスレッドにいい感じにスケジューリングしてくれて、GILやGVLもないので、I/OもCPUもマルチコアをしっかり使える。
記事が強調しているのは、「どの言語が偉いか」じゃなくて、「タスクの特性にあった選び方をしよう」という点なんですよね。I/O中心なのか、CPUをガリガリ使うのか、あるいはそのミックスなのか。なんとなく「スレッド使えば速いっしょ」と思ってると踏み抜くポイントを、丁寧に見せてくれます。並行・並列プログラミングをおさらいしたい人におすすめです。....

3本目は、ちょっと雰囲気を変えてデスクトップ環境のお話。タイトルは「美しいLinuxデスクトップで開発をしませんか?」。
筆者の方は、ミニPCに Ubuntu ベースの「Zorin OS」というディストロを入れて、1年以上個人開発で使っているそうです。キャッチコピー的には「中身はUbuntu、体験はZorin」。過去に別のディストロで挫折したことがある方でも、UIや初期設定がかなり整っているおかげで、そのまま快適に使えているよ、というレポートになっています。
おもしろいのが、「余っているPCをサブの開発マシンとして再活用しよう」という視点。Macはメイン機として安定しててほしいけど、Linuxマシンは「壊してもまあいい検証環境」として、いろんなツールや設定を試すのにちょうどいい、という考え方ですね。
記事ではCore版を前提に、推奨スペックや、単独インストール推奨、SSDで使おうね、といったハード寄りの話から、日本語入力の注意点、パッケージ管理はaptとFlatpakを中心に、みたいなベストプラクティスまでかなり具体的。
さらに、Git、VSCode、Zsh+starship、goenv、Docker、各種DBクライアント、HTTPieやPostmanのようなAPIツール、Zellij・Atuin・bat・dyskといったCLIツールの紹介、GNOME拡張やswappiness調整によるパフォーマンス改善など、「この通り入れていけばとりあえず快適な開発環境ができるよ」というガイドになっています。
「Linuxは気になるけど、面倒なのはちょっと……」という人に向けて、面倒さを最小限にしつつ、美しいデスクトップで楽しく開発するための入り口を丁寧に作ってくれている記事です。これ読んだら、押し入れの古いPCを引っ張り出したくなるかもしれません。....

さあ4本目。インフラ・バックエンド寄りの話題です。タイトルは「Node.js のコンパイルキャッシュで Cloud Run のコールドスタートを速くする」。
ビットキーさんでは、TypeScriptで書かれたバックエンドをCloud Run上で動かしているんですが、トラフィックが急に増えたとき、新しいインスタンスが立ち上がる「コールドスタート」の時間が問題になっていたそうです。以前は起動に30〜40秒かかっていたものを、Node.js v22.1.0 で入ったコンパイルキャッシュ機能をうまく使って、約15秒まで短縮した、という実践レポートになっています。
ポイントは、モジュールの parse、link、evaluate といった「ランタイムじゃなくてもいい処理」をビルド時にやってしまって、その結果をディスクにキャッシュしておく、という発想。
具体的には、最終ステージのOCIイメージの中で `NODE_COMPILE_CACHE` を設定して、warmupスクリプトから `enableCompileCache` を有効にしたNodeプロセスでエントリポイントを一度import。そこで生成されたキャッシュを `flushCompileCache` で書き出しておく。本番起動時も同じNodeオプションとパスで動かすことで、そのキャッシュを再利用して高速起動を実現しています。
サーバレス環境って、ランタイムや言語を変えなくても、こうした起動パスの最適化でまだまだ伸びしろがあるんだな、と思わされる内容です。Cloud Runや他のFaaSで、Node.jsの起動時間に悩んでいる人には、かなり参考になるはずです。....

そしてラスト5本目。タイトルは「音声合成の日本語化手法が一般化した話」。
音声合成、最近かなり耳にする機会も増えましたが、日本語ならではの難しさがあるんですよね。漢字の多読み、そしてアクセントの存在。英語みたいに「テキストをそのままSeq2seq TTSモデルに突っ込めばOK」とはいきません。
片仮名だけで入力すると、読みは一意に決まるけど、アクセントが表現できなくて不自然な読み上げになってしまう。そこで著者が提案しているのが、日本語アクセント研究の知見を使って、「片仮名(あるいは音素列)にアクセント記号を埋め込んだ表記」をモデルの入力に使う方法です。
この手法を Tacotron 2、Deep Voice 3、Transformer の3つの方式で評価したところ、どれにおいても「アクセント記号付き入力」が最も自然に聞こえる、という結果が出た。今では ESPNet や ttslearn といったツール群でも使われている、かなり「定番」のやり方になっているそうです。
ただし問題は、私たちが普段書く「漢字仮名交じり文」から、正しい読みとアクセント記号付き列に自動変換する、日本語G2P、つまり言語処理部。ここが依然として難題で、特に固有名詞の読みなどはまだまだ課題が多い。
この記事は、音声合成モデルそのものというより、その前段階の「日本語をどう表現してモデルに渡すか」という、地味だけど本質的な問題に光を当てています。今後はこの日本語言語処理部の課題を掘り下げていく予定、ということで、日本語TTSに興味がある人には必読の内容です。

というわけで、きょうは全部で5本、駆け足でご紹介しました。
JavaScriptネイティブRPCの「Cap'n Web」、
各言語の並列・並行処理の落とし穴を整理した記事、
Zorin OSでつくる美しいLinux開発デスクトップ、
Node.jsコンパイルキャッシュでCloud Runのコールドスタートを速くした事例、
そして、日本語音声合成を自然にするためのアクセント付き表現のお話まで、幅広くお届けしました。

気になる記事があった方は、詳しい内容はショーノートにまとめてありますので、あとでゆっくりチェックしてみてください。
「zenncast」では、番組の感想や、取り上げてほしいテーマ、普段どんなふうにZennを活用しているか、などなど、お便りもお待ちしています。

それでは、そろそろお別れの時間です。
お相手はマイクでした。
次回の「zenncast」でまたお会いしましょう。それでは、いってらっしゃい。

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