どうもマイクです。おはようございます。
「zenncast」お届けしていきましょう。今日は2025年12月29日、月曜日の朝7時です。年末ムードも高まってきましたが、いつもどおりZennで今トレンドの記事をチェックしながら、テックな話題をゆるっと紹介していきますね。
今日は全部で5本の記事をご紹介していきます。機械学習のガッツリ最適化から、数理最適化、Attentionの理論、RustでPython拡張、それにMCPサーバー設計と、かなりバラエティ豊かなラインナップになってます。では、順番にいきましょう。
まず1本目。「Tesla T4でMNIST推論 2,780万枚/秒を出すための最適化技術」という記事です。
タイトルからしてだいぶ攻めてますが、ColabのTesla T4でMNISTの推論を“約2,780万枚/秒”までブン回すためのノウハウを、再現できる形でまとめた内容になっています。モデル自体は28×28を784に潰した2層のMLPで、GEMMを2回とReLUというシンプル構成。でも入力と重みをFP16でGPUに載せっぱなしにして、shapeもレイアウトも固定、Tensor Coreをフルで回してGEMMの性能を極限まで引き出す、という発想です。
ポイントはCPU側のオーバーヘッドをどれだけ殺せるかで、その決め手になっているのがCUDA Graph。普通に実行したときは約1,012万枚/秒だったのが、Graphをreplayすることで約2.75倍まで加速した、というのはなかなかインパクトありますよね。学習も工夫されていて、最初は1層目固定+Ridge-ELMでちゃちゃっと初期解を作って、そのあと全部の層をクロスエントロピーで微調整。精度は0.9239から0.9679まで上がるんですが、推論の構造は一切変えないので、速度低下は約11%にとどめている。さらに、F.linearかmmか、クラス次元のパディングをどうするか、ReLUをin-placeでやるかどうか、torch.compileのモードなども、ちゃんと実測してスループットがベースラインの80%を切るような設定は採用しない、というAuto-tuneをかけています。
まとめると「GEMM中心設計」「FP16」「固定shapeでCUDA Graphをreplay」という三点セットで、最終的な2,800万枚/秒クラスを達成している、というお話。GPU最適化が好きな方には読み応えバッチリの記事です。….
続いて2本目。「実務レベルで最適化のコードを書く時の設計」という記事です。
こちらは数理最適化を仕事で使うとき、コードをどういうふうに設計するとチームで扱いやすいか、そのベストプラクティスをまとめたものになっています。まず大前提として、「定式化がわからないとコードが読めない」という問題がありますよね。そこで著者は、リポジトリに必ずJupyter Notebookなどで数式付きのドキュメントを入れておくことを推奨しています。これはデータサイエンス周りでよくある“コードはあるのに意味が伝わらない”問題への、かなり実践的な解決策です。
構成としては、最適化専用の`optimizers`モジュールを切って、APIサーバーなど最適化と関係ない処理は別ディレクトリに分離。具体例としては、`ProductionPlanner`みたいなクラスを用意して、コンストラクタで入力の受け取り・前処理・変数定義まで済ませてしまい、`solve`メソッドで制約と目的関数を積み上げて、最後にソルバーを呼ぶ、という流れにしています。制約や目的関数も `_constraints_xxx`、`_objective_xxx` のように役割ごとにメソッド分割して、ビジネス側ともコミュニケーションしやすい命名にするのがコツ。
さらに結果の可視化はクラスから切り離して、別モジュールの関数として実装しておくことで、「過去の入出力ログさえあれば、あとから調査・可視化できる」ようにしておく。実務で運用まで考えると、ここがかなり効いてくるんですよね。数理最適化を“プロダクトの一部”として組み込むときの、設計のツボがきれいに整理されている記事です。….
3本目は、少し理論寄りのネタ。「AttentionをMarkov連鎖として捉える」という記事です。
Transformerのself-attentionを確率論の観点から理解しよう、という内容で、クエリとキーから計算したスコアに行方向softmaxをかけてできるattention行列Aは、要素が非負で各行の和が1、つまり行確率行列だよね、と。なので、トークン位置を“状態”とみなすと、これは離散時間Markov連鎖の遷移行列として扱える、というわけです。
任意の確率分布v^(0)を用意して、attentionを1回かける操作は v^(1) = v^(0) A という1ステップの遷移に対応し、n回やると v^(n) = v^(0) A^n。nを無限に大きくして極限が存在すれば、それは π = πA を満たす定常分布になっていて、これは固有値1に対応する左固有ベクトルだ、というところまできれいにつながります。
記事で紹介されている論文では、このときの第二固有値 λ2 を使って、定常分布への収束速度を評価し、その値に応じて各ヘッドを重み付け平均する手法を提案しています。実験では、この“Markov連鎖としての性質”をうまく利用することで、下流タスクの性能が向上したという結果も紹介されています。Attentionを「なんとなく重み付き平均してるやつ」から一歩進めて、確率過程として理解してみたい方には、なかなか面白い視点の記事です。….
4本目は実装寄りのお話。「Rust製のPythonライブラリを自作してみた」という記事です。
こちらは、処理速度の向上とRust学習を目的に、RustでPythonの拡張ライブラリを自作し、その開発環境づくりからテンプレート化までやってみた、というチャレンジの記録です。Python側ではuvとmaturinを使って、pyproject.tomlの設定やruffによるLintなどを整備。Rust側ではpyo3を使って、Cargo.tomlやclippyの設定をちゃんと共存させています。
題材はフィボナッチ数列の計算なんですが、Rust実装とPython実装をベンチマークしてみると、再帰版でPythonに対して約28倍の高速化が出た、という結果になっています。もちろんベンチマークの取り方や実装パターンにも左右されますが、それでも「ホットスポットだけRustで書く」戦略の魅力がわかる数字ですよね。さらに著者は、copierを使って、uv・ruff・pyrefly・maturin・clippyなどを前提とした“Rust製Pythonライブラリ開発テンプレート”まで用意して公開しています。
総括としては、「RustはC++よりビルドまわりが楽で、AIの補助も使えば速度改善を低コストに導入できる」というポジティブな結論。読者からのコメントを受けてコードを修正した話も書かれていて、実践的で等身大の開発記録になっています。Pythonでパフォーマンスに悩んでいる方や、Rust触ってみたい方には刺さりそうな内容です。….
そして5本目。「APIをそのままMCPサーバーにするな」という記事です。
これは最近盛り上がっているMCP、Model Context Protocolまわりの話で、「既存のAPIを、そのまま機械的にMCPサーバー化すると痛い目を見るよ」という注意喚起になっています。理由はシンプルで、AIエージェントは毎回ツール定義とツール応答を丸ごと読みにいくので、ツールの数や説明の長さ、レスポンスのサイズがそのままトークンコストに跳ね返ってくるからなんですね。
問題になりやすいのは三つ。まず、細かく分かれた大量のエンドポイントを、そのままツール化してしまうこと。次に、APIの仕様書レベルの長い説明文をdescriptionに突っ込んでしまうこと。そして、大量フィールドを含むレスポンスを、そのまま返してしまうこと。この三つをやると、コストも精度も一気に悪化します。
対策としてサーバー側でできるのは、ツールを統合して数を減らすこと、説明文は200文字以下を目安に簡潔にすること、レスポンスは必要最小限にしつつ要約や件数制限をきっちりかけること。一方で、「きれいじゃないMCPサーバー」を前提に、クライアント側で頑張るパターンもあって、ツール定義をキャッシュしたり、ツール定義を検索して本当に必要なものだけ選んだり、大きな応答を要約したりといった工夫が紹介されています。ただ、この“自動要約”は実装難度が高いよね、という指摘もあります。
結論としては、「AIにとって使いやすく、コスト効率の良いインターフェースを設計しよう」というメッセージ。エージェントを作る人も、最終的なユーザーも、無駄に苦しまないMCPサーバー設計を心がけよう、という締めくくりになっています。
ということで、今日は5本の記事を駆け足でご紹介しました。
GPUでMNISTを2,780万枚/秒まで最適化する話、実務での数理最適化コード設計、AttentionをMarkov連鎖として見る理論的な視点、RustでPython拡張を自作してテンプレートまで作った話、そしてMCPサーバーをどう設計するか、というインターフェースの話。このあたり気になったトピックがあれば、詳しい内容はショーノートに載せておきますので、ぜひ元の記事を読んでみてください。
「zenncast」では、番組の感想や「こんなテーマを取り上げてほしい」といったリクエストもお待ちしています。日々の開発で感じたモヤモヤや、刺さったZennの記事なんかも教えてもらえると嬉しいです。
それでは、そろそろお別れの時間です。
お相手はマイクでした。また次回お会いできるのを楽しみにしています。それでは、いってらっしゃい。